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交通事故によって自営業者が怪我をした場合の休業損害の計算方法(外注を利用した場合)
1 休業損害
交通事故によって怪我をして働けなくなった場合には、被害者は、加害者に対し、休業損害を請求することができます。この点は、会社員であっても自営業者であっても同じです。
2 自営業者の休業損害の計算方法
自営業者の休業損害は、原則として、事故前年の確定申告書に記載された所得金額をベースに計算されます(厳密にいいますと、青色申告特別控除や減価償却費等の固定費が所得金額に加算されることになります。)。
もっとも、自営業者の場合、注文者との関係で、仕事に穴をあけるわけにはいかない場合も多く、①無理をして働く、②代わりの業者に仕事を依頼する、といったケースが多いのではないでしょうか。
3 無理をして働いた場合
無理をして働いた場合は、仕事に穴があいていないため、売上高の減少はありません。また、余計な経費もかかっていません。つまり、被害者には、売上高と利益のいずれにも損失が発生していないこととなります。この場合、休業損害は発生しません。
4 代わりの業者に仕事を依頼した場合
代わりの業者に仕事を依頼した場合(外注した場合)は、注文された仕事を行っているため、被害者には売上高の減少はありません。しかし、代わりの業者に依頼したことで外注費が発生し、その結果、被害者の利益は減少したことになります。
この場合、外注費は、交通事故がなければ発生しなかった経費となります。つまり、外注費は、交通事故によって発生した「余分な経費」であり、交通事故の補償対象となります。
実務では、このような外注費の全額が補償対象となるかについては、①事故前年の所得金額を上回ることができないこと、②損害賠償の対象となる休業期間といった点が争いとなります。
また、事故前から外注費が発生していた場合には、事故後の外注費が、「事故がなくても発生した費用」(=補償対象ではない)であるか「事故が原因で発生した費用」(=補償対象となる)であるかが争われます。
さらに、②については、自営業者の場合には休業を証明してくれる第三者がいないことから、怪我の程度や仕事内容によっては、この点が争われるケースもあります。
自営業者の休業損害の計算でお悩みの方は、弁護士加藤大喜までご相談ください。
交通事故における傷害慰謝料のポイント【被害者向け】
交通事故によって怪我をした場合、被害者は、加害者に対し、治療費を請求することができます。また、怪我のために仕事を休んだ場合には、休業損害を請求できます。
さらに、これらのほか、被害者は、加害者に対して傷害慰謝料を請求することができます。もっとも、傷害慰謝料とは、どんな損害であるか、また、どのように計算されるのか、イメージがつかない人が多いのではないでしょうか。
今回は、傷害慰謝料に関するポイントについて、説明します。
1 傷害慰謝料とは
傷害慰謝料とは、交通事故で負傷した被害者の精神的苦痛を補償する損害項目です。簡単に言うと、「交通事故で怪我をして、つらい思いをしたこと」に対する補償です。
傷害慰謝料が認められるためには、交通事故によって「怪我をしたこと」が必要となります。このため、被害者が怪我をしていない事故(物損事故)の場合には、たとえ被害者の過失がゼロであったとしても、被害者は傷害慰謝料を請求することができません。
2 傷害慰謝料の計算方法
それでは、傷害慰謝料は、どのように金額が決まるのでしょうか。
損保実務や裁判実務では、傷害慰謝料は、治療期間(入院期間、通院期間)や治療日数(入院日数、通院日数)に基づいて、その金額が決定されます。具体的には、治療期間が長いほど、傷害慰謝料は増えることになります。逆に、車は大破したものの、幸いにして軽傷であったため、ほとんど通院していない場合には、傷害慰謝料は低額となります。
このような説明を聞くと、治療期間を長くしようと考える人もいるかもしれません。しかし、軽傷事案(むち打ちなど)で治療期間が長期化している場合には、加害者側の保険会社は継続治療の必要性を争い、場合によっては、治療費の立替払いを中止することがあります(この場合、治療費は自己負担となります。)。このため、いつまで通院するかについては、慰謝料増額を目的とするのではなく、あくまでも怪我の治療に必要な限度にとどめてください(いつまで通院するかは、医師とよく相談してください。)。
3 傷害慰謝料の基準
傷害慰謝料は、治療期間や治療日数によって金額が変わってきます。さらに、傷害慰謝料は、次のとおり、その金額を計算する根拠となる基準が複数存在します。
① 自賠責基準
② 任意保険基準
③ 裁判基準
一般論として、①→②→③の順で、傷害慰謝料の金額は高額化していきます。このような話を聞くと、「③ 裁判基準」で請求したいと考える人が多いのではないでしょうか。
もっとも、「③ 裁判基準」とは、文字どおり、裁判になった場合に認定される傷害慰謝料の基準です。したがって、訴訟前の示談交渉の段階では、裁判基準で傷害慰謝料が認められることは、ほとんどありません。
最近では、被害者側に弁護士が就任するケースも増えてきましたが、その場合でも、保険会社が裁判基準をそのまま適用することなく、裁判基準の80%程度の傷害慰謝料を提示する場合が多いといえます。
裁判基準とは、あくまでも裁判を起こした場合の基準です。そして、裁判には時間と労力がかかります(さらに、裁判中は精神的ストレスもかかると思います。)。つまり、裁判基準による傷害慰謝料は、このような時間と労力をかけた結果の金額なのです。
したがって、裁判をしていない時点で、保険会社が裁判基準を使った傷害慰謝料を認めることは、基本的にはないとお考えください。
4 まとめ
「保険会社から提示された傷害慰謝料の金額が安く、納得できない」とのご相談を受けることがあります。
保険会社に対し、「慰謝料が安い」と言った結果、傷害慰謝料を増額してもらえればいいのですが、そのように対応してもらえる場合は決して多くありません(仮に、傷害慰謝料が増額されたとしても、わずかな金額にとどまります。)。
「できる限り慰謝料を払って欲しい」と思うことは、被害者としての自然な考えだと思います。ただ、一方で、交通事故の補償問題が解決しないことによるストレスも大きいと思います。
「慰謝料の最大化」と「ストレスからの解放」のどちらがよいかは一概には言えませんが、この記事が、皆様にとって少しでも納得のいく解決の参考となれば幸いです。